「家を直せない」と悩みを抱える方が増えています。総務省「消費者物価指数」によると、住居の外壁塗装・屋根修理・水道工事の費用水準は2020年に比べ軒並り23〜24%も上昇しました。標準的な戸建て住宅(延べ床116平方メートルの木造2階建て)に築後50年でかかる雨漏りやシロアリ対策、キッチン・浴室の交換など基礎的修繕の総費用を試算すると、約1,475万円という数字も示されています。修繕費が膨らむ今、「直して住み続ける」か「今の価格で売る」かを考えるための視点を整理しました。
1. なぜ修繕費用が上がっているのか
背景にあるのは人件費と資材の両方の高騰です。国勢調査によれば大工の人数は過去20年ほどで半減するなど、建設業界は構造的な人手不足に陥っています。資材の値上がりも止まらず、輸入に頼る品目も多いため円安傾向がさらに拍車をかけています。標準的な戸建てで築15年前後に必要になる外壁や屋根の塗装は、現在150万円前後が目安とされ、昨年比でも10万円程度高くなった例があるとされています。
2. 大規模修繕が集中しやすい「築30年前後」という節目
修繕は一定周期で必要になることが多いため、専門家に相談して「いつ」「いくら」必要になるかを把握することが大切です。特に注意したいのは、屋根・外壁の再塗装に加え、給排水管の交換、シロアリ予防の再施工など、複数の工事が同時期に重なりやすい築30年前後の時期です。個別に発注すれば足場設置費用がその都度かかるため、できる限り同じタイミングでまとめて発注することで費用を節約できる可能性があります。
住宅ローンの返済が終わった後に支出をゆるめたとたん、大規模修繕の請求が来て慌てるケースは珍しくありません。月2〜3万円程度でも早期から積み立てておくことが、将来の家計リスクを大きく下げることにつながります。
3. 「優先度の高い修繕に絞る」という考え方
年齢や家族構成に応じ、優先度の高い修繕に絞り込む考え方も有効です。使用頻度が低くなった部屋のリフォームを後回しにする一方、家族が毎日使うキッチンや風呂の機能維持を優先する、といった「選択と集中」の発想です。一般的には、内装より外壁や屋根の修繕を優先すべきとされています。雨漏りや腐朽を放置すると、内装を直した後にやり直しが必要になったり、建物の安全性そのものに関わったりするためです。
4. 相続した実家や空き家では「売却」も選択肢に
戸建てはマンションと異なり、個人で修繕費を貯蓄する必要があります。教育費負担が増える時期に修繕が重なると家計が行き詰まる恐れもあります。特に居住予定のない相続した実家や空き家の場合、多額の修繕費用をかけて維持するよりも、現状のまま「今の価格で売る」方が、費用対効果の面で合理的なケースが多くあります。
首都圏のマンションでも直近4年で修繕コストが2割弱上昇しており、修繕積立金の不足は住民全体の問題にとどまらず、マンションの資産価値にも直結します。修繕が遅れたり計画が不十分だったりする物件は、売却時に価格が下がるリスクが高まります。
まとめ
戸建て・マンションを問わず、住まいの修繕はもはや後回しにできる問題ではありません。費用の上昇が続く今こそ、修繕にかかる見積もりと、現状での売却価格を比較したうえで、「直して住み続ける」か「今の価格で売る」かを検討することが賢い判断につながります。
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よくある質問
修繕費用が用意できない場合、どうすればよいですか?
優先度の高い修繕に絞り込む、複数の工事をまとめて発注し足場代を節約するといった方法があります。それでも負担が大きい場合は、無理に修繕を続けるのではなく、今の資産価値を確認したうえで売却を選択肢に加えることも一つの方法です。
相続した実家で大規模修繕の時期が近づいている場合、修繕すべきですか?
居住予定がない実家であれば、修繕費用をかけて維持するよりも現状のまま売却する方が合理的なケースが多くあります。修繕の見積もりと現状での売却価格を比較したうえで判断することをおすすめします。
出典:総務省「消費者物価指数」、住宅金融支援機構の公表情報等を参考記事の試算をもとに作成。個別の工事費用は物件・地域により異なります。本記事は情報提供を目的としており、修繕・リフォームに関する助言ではありません。