離婚や相続をきっかけに、夫婦で共有名義になっている不動産を売却するケースが増えています。共有名義の不動産は、名義と実質的な所有権の関係、離婚時の財産分与、相続時の税務調査など、単独名義の不動産にはない論点があります。売却前に整理しておきたい基礎知識をまとめました。
1. 「名義」と「実質的な所有者」は必ずしも一致しない
民法760条では「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定められています。日常生活で使われる生活費については、どちらの名義かにこだわる必要はありません。しかし、夫の収入で貯めたお金を妻名義の口座に移した場合など、名義と実質的な所有者が異なるケースでは、相続や離婚の際に「誰の財産か」が問題になることがあります。
2. 離婚時の財産分与——共有名義不動産はどう扱われる
結婚生活中に形成された財産は、離婚時に「財産分与」として夫婦で分けるのが原則です。結婚後に購入したマイホームは、名義がどちらか一方であっても、原則として夫婦の共有財産として扱われ、折半されます。婚姻中に2人で形成した財産の分与には、原則として贈与税はかかりません。ただし、独身時代の貯蓄や相続で受け継いだ財産(特有財産)は分与の対象外となるため、記録を残しておくことが大切です。
3. 相続時の「名義預金」と税務調査
夫婦のどちらかが亡くなった際、収入を得ていたのが夫だけだった場合、妻名義に移した財産も実質的には夫の相続財産として申告が必要になる可能性があります。これがいわゆる「名義預金」の問題です。判断基準は口座の名義ではなく、「誰の収入によって形成されたか」という実質で判断されます。
2015年の税制改正で相続税の基礎控除が「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から「3,000万円+600万円×法定相続人数」に縮小され、相続税の申告が必要な人の割合は改正前の約4%程度から改正後は約8%程度に増加したとされています(出典:国税庁関連資料、各種相続税解説サイト)。共有名義の不動産や名義預金がある場合、税務調査での確認対象になりやすい点に注意が必要です。
共有名義の不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。離婚後や相続後にそのまま放置すると、後になって共有者の一人と連絡が取れない、意見がまとまらないといった理由で売却が難航するケースがあります。早めに方針を決め、必要であれば専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
夫婦共有名義の不動産を売却する際は、名義と実質的な所有権の関係、離婚時の財産分与のルール、相続時の名義預金の考え方を整理しておくことが重要です。判断に迷う場合は、税理士や弁護士など専門家に早めに相談することをおすすめします。
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よくある質問
※本記事は情報提供を目的とした一般的な内容であり、法律・税務上の助言ではありません。財産分与・名義預金・相続税の取り扱いは個別の状況により異なるため、実際の判断は弁護士・税理士など専門家にご相談ください。