日本は今、多死社会・大相続時代を迎えています。国税庁の統計によると、相続税の課税割合(亡くなった人のうち相続税が課税された人の割合)は2023年度に9.9%となり、2015年の基礎控除引き下げ前(2014年:4.4%)と比べて倍以上に上昇しました。「うちは関係ない」と思っていた家庭でも、相続税の対象になるケースが増えています。
1. なぜ相続税の課税対象が増えているのか
2015年の税制改正で、相続税の基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられました。例えば法定相続人が3人の場合、控除額は8,000万円から4,800万円へと大幅に縮小しています。首都圏や政令指定都市など、地価の高いエリアに持ち家がある場合、この改正によって新たに課税対象となった家庭は少なくありません。
3,000万円+600万円×法定相続人の数。例:相続人が配偶者と子2人の合計3人の場合、基礎控除額は4,800万円。不動産と預貯金の合計がこれを超えると相続税の申告・納税が必要になる可能性があります。
2. 相続発生後の不動産は「動かしにくい」
相続が発生してから不動産を売却しようとすると、まず遺産分割協議で相続人全員の合意が必要になります。協議がまとまらなければ不動産は共有名義のまま放置され、後の世代でさらに権利関係が複雑化するケースも少なくありません。特に、相続人の一人が遠方に住んでいる、あるいは相続人同士の関係が疎遠といった事情がある場合、協議が長期化しやすい傾向があります。
3. 生前売却という選択肢のメリットと注意点
こうした背景から、判断能力・体力があるうちに自ら不動産を売却し、現金化・整理しておくという選択をする方が増えています。現金であれば相続時に分けやすく、相続人同士のトラブルを避けやすいというメリットがあります。また、売却で得た資金の一部を、暦年贈与の非課税枠(年間110万円)などを活用しながら生前に子や孫へ渡していく計画を立てることも可能です。
一方で、不動産を売却すると譲渡所得税(所有期間5年超で長期譲渡所得、5年以下で短期譲渡所得として税率が異なります)がかかる場合があります。マイホームを売却する場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」が使えるケースもありますが、要件の確認が必要です。生前贈与についても、2024年の税制改正で相続時精算課税制度や暦年贈与の持ち戻し期間(相続開始前7年に順次延長中)が変更されているため、最新の制度を踏まえた検討が欠かせません。
相続税・譲渡所得税・贈与税はいずれも制度が複雑で、個々の家族構成・資産状況によって最適な選択肢が異なります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、具体的な税務判断や助言ではありません。実際の売却・贈与の検討にあたっては、税理士等の専門家に必ずご相談ください。
まとめ
相続税の課税対象が広がる中、生前に不動産を整理・売却しておくことは、相続人同士のトラブル防止や税負担の計画的な軽減につながる有効な選択肢の一つです。ただし、税務面の判断は複雑なため、早めに専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
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よくある質問
※相続税課税割合の数値は国税庁「相続税の申告事績の概要」に基づく一般的な統計です。個別の税務判断については税理士等の専門家にご確認ください。本記事は情報提供を目的とした一般的な内容であり、税務・法律上の助言ではありません。