2026年4月から施行された改正区分所有法により、マンション建て替えの決議要件の一部が緩和されました。しかし専門家の間では「法的ハードルは下がっても、資金的な問題は容易に解決しない」との声が根強くあります。築古マンションを所有している方にとって、建て替えや敷地売却だけでなく、早期の個人売却という選択肢も含めて「出口」を考えることが重要になっています。
1. 決議要件は一部緩和、ただし原則は維持
建て替え決議は、改正後も原則として区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。ただし、建物が「耐震性不足」「火災安全性不足」「外壁剥落のおそれ」「給排水管の老朽化」「バリアフリー不適合」という5つの客観的事由のいずれかに該当する場合、決議要件は各4分の3以上に引き下げられます。また、建物・敷地の一括売却や、建物を解体しての敷地売却、既存の躯体を活かす「1棟リノベーション」についても、同様の多数決で実施できるよう法整備が進みました。
2. 建て替え費用の負担は年々増加している
国土交通省の資料によれば、直近の2017〜2021年におけるマンション建て替えの区分所有者1人あたりの負担額は平均約1,941万円にのぼり、以前と比べて大きく増加しています。かつての建て替えは、マンションを大型化・高層化し、増えた床面積を外部へ販売した収益を工事費に充てるのが典型的なモデルでしたが、近年はもともと容積率に余裕がない物件が増え、大型化が困難なケースが目立ちます。新規床の販売による収益が見込めない分、既存の区分所有者の負担は重くなる一方です。
国土交通省の統計によれば、築40年以上の分譲マンションは2024年末時点で約148万戸にのぼり、2044年末には約483万戸へと急増する見通しです。老朽化が進む高経年マンションへの早期対応は社会的な課題となっており、今回の法改正の背景にもなっています。
3. 1棟リノベーションや敷地売却にも実務上の壁がある
1棟リノベーションは工事費自体を建て替えの6〜7割程度に抑えられる可能性がある一方、新規床の外部販売は通常想定しないため既存所有者の費用負担は依然重く、工事中の仮住まい確保という実務上のハードルも残ります。敷地売却についても、解体費が売却価格から差し引かれる形になるため、区分所有者の手元に残る金額は想定より少なくなりがちで、区分所有者それぞれの年齢や資産状況によって受け入れられる条件も異なるため、合意形成には時間がかかります。
4. 個人としての「早期売却」という選択肢
建て替え・1棟リノベーション・敷地売却は、いずれも管理組合全体の合意形成を前提とする「集団的な出口」です。これに対し、区分所有者が個人の判断で進められるのが専有部分の売却です。マンション全体の合意形成を待つ間に老朽化がさらに進んだり、建て替え費用の負担がさらに増加したりするリスクを踏まえると、老後の資金計画や資産整理を考えている方にとっては、早めに売却して資金化することも合理的な選択肢の一つです。
特に、相続などで取得した築古マンションを保有し続けている場合、将来の建て替え負担金や修繕積立金の増額リスクを考慮し、今の価格で売却することも検討に値します。
まとめ
改正区分所有法により、築古マンションの「出口」の選択肢は法制度上広がりました。しかし建て替え・1棟リノベーション・敷地売却は、いずれも多額の費用負担と長期にわたる合意形成が必要です。個人でコントロールできる選択肢として、早期の売却も含めて資産の整理方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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よくある質問
出典:2026年4月施行の改正区分所有法に関する各種解説記事、国土交通省「築後30・40年以上の分譲マンション戸数」「マンション建替えに関する資料」等を参考に作成。本記事は情報提供を目的とした一般的な内容であり、法律・投資に関する助言ではありません。実際の判断は管理組合・専門家にご相談ください。